はじめに

「このチャット画面、もう3日も使ってるから、ジェンスパーク(Genspark)も私のプロジェクトのことをよく理解してくれているはず」

そう思っていた時期が私にもありました。しかし現実は真逆でした。チャット画面を長く使えば使うほど、ジェンスパークはどんどん「忘れっぽく」なっていったのです。

前回の記事では、ジェンスパークが「嘘をつく」問題を取り上げました。今回は、占いサイトの開発で痛感した「AIの記憶問題」について、実体験とその対策方法をご紹介します。

※2026年9月追記:この記事を最初に書いた2025年当時と比べると、Gensparkの記憶・コンテキスト管理機能はかなり変わっています。現在はAI Driveだけでなく、プロジェクト間で会話履歴やファイルを共有できる「Hub」や、Gensparkでの過去の作業、ファイル、メール、会議などを記憶層として利用する「SecondBrain」も提供されています。そのため、この記事で紹介している「定期的にチャット画面を移行する」という方法は、当時私が使っていた対策として残しつつ、現在の使い方も追記しています。

Gensparkの現在の機能全体については「ジェンスパーク(Genspark)とは?1年半使った筆者が、できること・メリット・注意点を解説」でもまとめています。

人間の感覚vs AIの現実

人間の期待

「長く一緒に仕事をすれば、相手は私の考え方や背景を学習して、どんどん理解が深まるはず」

これは人間関係では正しいですよね。同じチームメンバーと働いていると、説明を省略しても通じるようになります。

AIの現実

この記事を書いた当時、通常のチャット画面を長く使い続けていると、実際には正反対でした:

  • チャット履歴が長くなると、重要な情報が埋もれる
  • コンテキストウィンドウ(記憶容量)の限界に達する
  • AI Driveに存在するファイルを参照できなくなることがあった
  • 記憶の断片化が進み、一貫性が失われる

当時はモデルごとのコンテキストウィンドウの大きさをかなり意識していました。

2026年現在のGensparkは、ChatGPT系、Claude系、Gemini系など複数のAIモデルを利用できるサービスになっているため、「Gensparkのコンテキストウィンドウは○○トークン」と一つの数字で説明するのは難しくなっています。

さらに現在は、Hubが同じHub内にある別プロジェクトの会話履歴を参照する「Cross-Project Context」に対応し、SecondBrainも過去のGensparkプロジェクトやファイルなどを記憶層として利用する仕組みになっています。

それでも、一度のAIとの会話で何でも永久に覚えてくれるわけではありません。長期プロジェクトでは、重要な仕様や決定事項をチャットだけに置いておかないことは、今でも重要だと思います。

AIの記憶の仕組みについては「AI開発で「記憶」を管理する重要性:初心者が見落とすポイント」でも詳しくまとめています。

実体験1: 3日目に突然「仕様を知らない」AIに

占いサイト開発の3日目、こんな会話がありました。

私:「昨日話したTwitter API連携の仕様に従って、コードを修正してください」

ジェンスパーク(Genspark):「申し訳ございません。Twitter API連携の仕様についての情報が見当たりません。詳細を教えていただけますか?」

え?昨日散々議論したじゃないですか...

原因を分析すると

当時は以下のような原因を疑いました。

  • チャット履歴が長くなりすぎて、2日前の情報をうまく参照できなくなっていた
  • コンテキストウィンドウの容量を圧迫していた
  • AIが直近の会話を優先して参照していた可能性

この時点で、同じチャット画面での会話は約2万字を超えていました。

ただし、Genspark内部で実際にコンテキストウィンドウの容量オーバーが起きていたのかまでは確認できていません。利用者側から見えていた現象としては、「昨日まで覚えていた仕様を突然参照できなくなった」という状態でした。

コンテキストウィンドウそのものについては「ジェンスパーク(Genspark)のコンテキストウィンドウ限界を乗り越える3つの戦略」でも詳しく紹介しています。

実体験2: AI Driveへのアクセス権限喪失

さらに深刻だったのが、GenSpark AI Driveに保存していた仕様書を「読めなくなる」現象です。

私:「AI Driveの/ジェンスパーク(Genspark)開発奮闘記/00_AI指示書.mdを確認して、プロジェクトの方針を教えてください」

ジェンスパーク:「申し訳ございません。そのファイルにアクセスできません」

実際にはファイルは存在しているのに、AIがアクセスできない状態になっていました。

この記事を最初に書いた当時は、長期間同じチャットを使っていたことが関係しているのではないかと考えていましたが、Genspark内部の具体的な原因までは確認できていません。

当時は、新しいチャット画面へ移行してAI Driveのファイルを改めて読み込ませることで復旧することが多かったため、定期的にチャット画面を移行する運用をしていました。

現在もAI Drive自体は提供されており、Plusでは50GB、Proでは1TBのAI Driveストレージが用意されています。また現在は、長期プロジェクトなら後述するHubにファイルを登録しておく方法も使えます。

コンテキストウィンドウの限界

最新のAIモデルでも、コンテキストウィンドウには限界があります。

この記事を最初に書いたときは、GPT-3.5、GPT-4、Claude 3.5などの具体的なコンテキストウィンドウの数値を一覧にしていました。

ただ、この部分は現在かなり状況が変わっています。

Gensparkでは複数の最新AIモデルを切り替えて利用できるうえ、モデルそのもののコンテキストウィンドウとは別に、HubやSecondBrainから関連情報を取得する仕組みも追加されています。そのため、古いモデルのトークン数を並べるよりも、「AIが一度にすべての過去情報をそのまま保持しているわけではない」と考えた方が、現在のGensparkでは分かりやすいと思います。

開発プロジェクトでは、

  • 仕様書
  • 長期間のチャット履歴
  • コード全体
  • エラーの記録
  • 過去に決めた設計方針

など、AIに把握してほしい情報がどんどん増えていきます。

そのため、モデルのコンテキストウィンドウが大きくなっても、重要情報を整理してAIに渡すことは依然として必要です。

記憶の断片化:最も厄介な問題

長期チャットで最も厄介なのが「記憶の断片化」です。

症状

  1. 以前決めた設計方針を忘れて、矛盾する提案をする
  2. 「それは前に話しました」と伝えても、「記録が見つかりません」と返される
  3. AI Driveのファイル構造を忘れて、存在するファイルを「見つけられない」と言う
  4. プロジェクトの背景や目的を忘れて、的外れな提案をする

当時は、長いチャットの中で過去の細かい情報が十分に参照されなくなることで、こうした現象が起きていると考えていました。

現在はHubやSecondBrainによって過去情報を参照しやすくなっていますが、それでも、AIが必要な情報を必ず正しく取り出してくれるとは限りません。

そのため、「重要な仕様はチャットのどこかに書いたから大丈夫」と考えず、後から検索・確認できる形で残しておいた方が安全です。

実践的な対策:1日おきのチャット画面移行

最も効果的だと感じた対策は、定期的にチャット画面を新しくすることです。

※2026年9月追記:これはこの記事を書いた当時の運用方法です。現在はHubやSecondBrainが追加されているため、すべての利用者に「1日〜3日おきに新しいチャットへ移行する」ことを一律におすすめするわけではありません。

現在なら、長期間続く案件はHubを作り、そのHub内でプロジェクトを分ける方法があります。同じHub内のプロジェクトでは会話履歴を共有できるため、「新しいチャットにしたら何も覚えていない」という問題をかなり減らせます。

当時の推奨パターン

  • 毎日移行: 大規模プロジェクトや重要な開発
  • 1日おき: 通常の開発ペース
  • 3日以内: 最低限の対策

チャット移行の手順

1. 現在のチャットで作業記録を作成

今日の作業内容:
- Twitter API連携の実装完了
- OAuth 1.0a認証の問題を解決
- 次のタスク:データベース設計

重要な決定事項:
- media_dataパラメータを署名に含める
- 環境変数は.envファイルで管理

2. AI Driveに保存

「今日の作業記録を/プロジェクト名/作業記録/2025-12-05.mdに保存してください」

3. 新しいチャット画面で再開

「AI Driveの/プロジェクト名/00_AI指示書.mdと/作業記録/2025-12-05.mdを読み込んで、プロジェクトの現状を把握してください」

当時は、定期的なチャット画面の移行が、ジェンスパーク(Genspark)の記憶問題を回避するかなり効果的な方法でした。現在でも、会話が長くなってAIの回答が明らかにおかしくなった場合には、新しいプロジェクトやチャットへ切り替える方法は使えます。ただ、最初から機械的に1日〜3日で移行するより、長期案件ではHubを利用する方が現在のGensparkの仕様には合っています。

チャットを移行する具体的な方法については「チャット画面移行のベストタイミングと3ステップ移行手順」でも詳しく紹介しています。

AI Drive活用:忘れても大丈夫な環境づくり

GenSparkのAI Drive機能は、この問題の強力な解決策になります。

AI Driveの主要機能

  1. ファイル収集・整理の自動化
    • 自然言語の指示でウェブ上の資料を自動収集
    • PDF、Office文書、画像、動画など形式を問わず取得
  2. 永続的なストレージ
    • チャット画面が変わっても、ファイルは保存されたまま
    • いつでも過去の情報を参照可能
  3. 構造化された情報管理
    • プロジェクトごとにフォルダ整理
    • 仕様書、作業記録、参考資料を体系的に管理

実践的なフォルダ構成

/プロジェクト名/
├── 00_AI指示書.md          # プロジェクトの全体像
├── 01_設計資料/
│   ├── プロジェクト最終プラン.md
│   └── 技術仕様書.md
├── 02_作業記録/
│   ├── 2025-12-03.md
│   ├── 2025-12-04.md
│   └── 2025-12-05.md
├── 03_参考ソース/
│   └── 過去プロジェクトコード/
└── 04_トラブルシューティング/
    └── 解決した問題一覧.md

2026年現在はHubも長期プロジェクトに使える

2026年現在、長期プロジェクトならAI Driveにファイルを置くだけでなく、Gensparkの「Hub」を利用する方法もあります。

Genspark公式Help Centerでは、Hubは関連する複数のプロジェクトをまとめて管理するためのワークスペースとして説明されています。

Hubに一度ファイルをアップロードすると、同じHub内の会話から利用できます。また「Cross-Project Context」により、同じHubに入っている以前のプロジェクトの会話履歴を参照して、新しいプロジェクトへ情報を引き継ぐこともできます。

例えば、

  • 「先週の市場調査を元に競合分析を作って」
  • 「昨日の会議プロジェクトを参照してアクションプランを作って」

といった使い方ができます。

長期間同じチャット画面を使い続けるよりも、1つの案件=1つのHubとして、その中で調査、開発、資料作成などのプロジェクトを分ける方が、現在は管理しやすいと思います。

SecondBrainで「毎回説明する」問題も改善されている

さらに2026年7月に発表されたGenspark AI Workspace 6.0では、「SecondBrain」が記憶レイヤーとして追加されています。

SecondBrainは、

  • 過去のGensparkプロジェクト
  • ファイル
  • メール
  • カレンダー
  • 会議
  • SlackやNotionなどの接続サービス

といった情報を個人のコンテキストとしてまとめ、Super Agentから利用できる仕組みです。

Genspark公式もSecondBrainについて、「毎回自分が誰なのか、何をしているのかを説明し直す問題」を解決するための仕組みとして紹介しています。

この記事を書いた2025年当時は、「AIは忘れるので、外部ファイルに記録して毎回読み込ませる」という対策が中心でした。

現在は、その考え方自体は変わりませんが、Genspark側にも長期的な文脈を保持・検索する仕組みがかなり増えています。

クイックリファレンス:AIの記憶を補助する

仕様書が大きくなると、ジェンスパーク(Genspark)は全体を読み込まなくなります。そこで有効なのが「クイックリファレンス」です。

クイックリファレンスの例

# プロジェクト・クイックリファレンス

## 基本情報
- プロジェクト名: ジェンスパーク開発奮闘記
- 目的: GenSpark/AI情報ブログの自動更新
- 技術スタック: React + TypeScript + Cloudflare

## 重要な決定事項
1. はてなブログのみ使用(Twitterは使わない)
2. メインサイトへのリンクは3回に1回
3. 記事は月・水・金に投稿

## よくある問題と解決策
1. OAuth認証エラー → media_dataを署名に含める
2. 環境変数が読めない → .envファイルの配置確認

このファイルを最初に読み込ませることで、AIは迅速にプロジェクトの全体像を把握できます。

この方法は現在でも有効だと思います。

また現在のHubには、Hub内のすべてのプロジェクトに適用する「Custom Instructions」もあります。毎回必ず守ってほしいルールや社内用語、出力形式などは、クイックリファレンスだけでなくCustom Instructionsへ登録する方法もあります。

まとめ:AIの限界を理解して上手に付き合う

重要なポイント:
  1. チャット画面だけに長期記憶を依存しない - 当時は1日〜3日おきに新しい画面へ移行、現在はHubなども活用
  2. AI Driveで永続的な記憶を外部化 - 仕様書、作業記録を必ず保存、フォルダ構造を整理して検索しやすく
  3. クイックリファレンスで素早く「思い出させる」 - 重要事項を1ページにまとめる、新しいチャット開始時に読み込ませる
  4. AIは「忘れる」ことを前提に設計する - 重要な決定は必ずドキュメント化、口頭(チャット)だけで済ませない
  5. 現在はHubやSecondBrainも使う - 複数プロジェクトの履歴やファイルを長期的なコンテキストとして利用する

ジェンスパーク(Genspark)は強力なツールですが、通常のチャット画面だけに人間のような長期記憶を期待するのは危険です。

この記事を書いた2025年当時はAI Driveを「外部記憶装置」として使うことが中心でしたが、現在はHubやSecondBrainなど、Genspark自身にも長期的なコンテキストを扱う仕組みが追加されています。

それでも、重要な仕様や決定事項を人間が確認できるファイルとして残しておくことは、今でも変わらずおすすめします。

次回は「ジェンスパークも不具合を埋め込む」というテーマで、AIが生成するコードの品質問題とデバッグ方法をご紹介します。

料金ページはこちら:Genspark公式料金ページ(ページ中ほどに料金が書いてあります)